IPCR No.4 企業の業績とイノベーション

1997年以降、企業が生産・販売する商品やサービスの価格と数量の減少が同時的に発生し、企業収益を圧迫するという状況が続いています。中小企業の景況感は、業況判断DIにより1993年以降マイナス20〜50の間で推移し、長く厳しい不況が続いていることを示しています。この間、売上高の減少傾向は慢性化し、企業が獲得する付加価値は減少しています。2000年以降は、不況が普通の状態であるとの認識ができあがり、ある種の諦めムードも漂っています。それでも企業が成長はしないまでも存続している場合は施策の打ち出しようもありますが、市場から退去する企業の増加も顕著になっています。1993年〜1996年までは14,000件前後の倒産件数が1997年以降は18,000件前後の水準に増加し大型倒産も目立つようになりました。1980年代のそれと比較すると、以前は開業間近の企業の倒産が多数を占めていたのに対して、今回の特徴は、業歴15年以上の企業が約60%を占め、また10年以上の企業で80%を占めていることです。業歴の長さが経営基盤の安定化や信用力につながっていたという側面が希薄化し、業歴の長さゆえに急速な経済の構造変化に対応できないという状況が明らかになってきています。

企業は開業して年数を重ねるに従って取引先数を拡大すると共に取引のパイプを太く強固なものへと変化させることで安定的な経営基盤を創り上げてきました。しかし経済成長の右肩上がりを前提にすることが不可能となった現状では信頼関係の構造が変化することは、やむを得ないものと認識しなければなりません。取引案件ごとに判断を行うという行為を『判断』とし、取引案件ごとに判断を行わない状況を『安心』とすると、この間の取引関係を信頼の程度として考えることができます。従来はこの『安心』型の取引構造により業歴の長い企業に有利な状況が形成されていましたが、近年においては『判断』型の取引構造が増加し相互に創造的な関係を形成する方向に進んでいるように考えられます。今や取引の判断要素は、安心という信頼の構造から旧態を変革し市場のニーズに適合する経営システムに対応し続ける企業との信頼関係の構築へと変化をしていると考えられます。

企業の収益性は、収益−費用=利益における利益獲得状況の良さの程度を対象としています。利益の源泉は企業が創り上げる価値、即ち付加価値です。企業は外部より財を購入し、設備等の物的な資本を投入し、更に人的な資本を投入することによって商品や製品・サービスを創り上げ、それを市場(顧客)に販売することによって付加価値を獲得します。付加価値は、簡単には収益−外部購入財で考えることができますが、付加価値は労働力の投入によって人が創り出します。市場で販売価格が低下すると付加価値は減少しますが、付加価値の減少は労働価値の低下に直結してしまいます。市場の変化に対応してモノと人を組み合わせて価値を創り上げることができるのは、唯一「人」だけですから、人が価値を付加し、その付加価値から賃金を受け取り、残りは貯蓄または投資されるという流れの中で企業業績と付加価値を捉えていくことが必要となります。企業業績は付加価値によって左右されるということは、付加価値を創り出す「人」とその集団としての「組織」の状況が好ましい状態にあることが重要なのではないでしょうか。
posted by Intelprise Consulting | インテルプライズレポート