IPCR No.3 産業の成熟化とマーケティング

産業の成熟した経済環境の中で企業が目指す方向について考えてみます。近年の物価水準の下落は企業の収益を低下させていますが、それは〔商品・サービス〕を〔市場・顧客〕に提供する販売価格の低下として認識されます。従来と同様の商品やサービスを提供しているにもかかわらず販売価格が低下すると、その差額が付加価値の減少となって企業経営にはね返ってきます。成熟した産業分野においては、受注総量の減少による企業間競争が価格競争を激化させ、価格の減少が更なる量的な受注競争を促進するという方向で作用し、付加価値の減少をスパイラル化します。このような商品が同質化した企業間の競争は、収益性を無視した一部の企業が市場内での価格競争を促進させたり、我慢比べの様相を呈して、企業の淘汰や業界の再編成を経ることによって市場が安定化に向かうという状況をつくり出し、最終的には収益性の低い事業分野になってしまうこともあります。

このような経営環境下での一般的な経営施策は、〔既存の商品・サービス⇔既存の市場・顧客〕の事業分野において外部購入財価格を削減すると共に業務システムを見直すことで物的資本や人的資本の経済合理性を高めてコストを削減し、価格競争で失った付加価値を向上させようとします。ところが、外部購入財価格の削減は同業他社も同様の施策を実施することから競争環境を変化させるまでには至りません。従って、受注量一定の中で物的・人的資本を圧縮できるような業務システムの改革が有効な施策として機能するものと考えられます。では使用資本を縮減し競争優位性を確保できるような業務システムの見直しとはいったいどのようなものなのでしょうか。

業務システムのイノベーションは、物的・人的資本の節約、縮減に寄与し、従来のコスト構造を変革するものでなければなりませんが、業務システムは目的を達成するための手段であり、それ自体が目的になるということはありません。手段は目的に従うとすれば、目的を明確にしておく必要があります。既存の事業分野を中心に考えれば、それは既存顧客(市場)が新たに欲するものを発見し満たすことで顧客満足度(CS)を高め、その結果として自企業の付加価値を増加させることに他なりません。既存顧客のニーズは顧客の価値の創造に資するものですから、当該顧客の情報をより多く収集・分析できる立場にある現取引企業が優位性を持っていると考えられます。従来の枠組みの中で既存の商品やサービスを提供することを前提として既存顧客のニーズを充たすことを考えるのではなく、顧客(企業)やサプライヤー、競合しない同業他社などと共同して事業や業務の再編を含めた新たな枠組みを創造することによって、顧客の収益性や経済合理性の向上を達成できるような商品やサービスの開発・提案が可能となります。このような取組みをステップとして新たな業務システムの構築も可能になるのではないかと考えられます。その意味において、既存の事業分野における価格・受注競争の回避は、新商品や新サービスの開発を伴って〔既存市場・顧客⇔新規商品・サービス〕事業分野へと企業を進化させると共に顧客との新たな信頼関係形成につながっていくのではないでしょうか。
posted by Intelprise Consulting | インテルプライズレポート