IPCR No.1 ROEと財務レバレッジ

企業経営の基本は、株主が出資した資本を経営活動を通じていかに増殖させることができるかに尽きます。そのために企業は、得意とする事業分野で財務的資本や人的・物的資本を投入して商品や製品、サービスや役務を創り出し、顧客に提供して付加価値を獲得することになります。獲得した付加価値は、資金調達コストや設備等の減価償却、人件費、公共サービス利用に対するコストに分配され、残余は再投資又は貯蓄されて経営活動は半永久的に継続することになります。株主資本に対するコストは配当金として支払われますが、わが国において配当金が意識されるのは上場企業や店頭公開企業で、中小企業の場合は、所有と経営が未分離である場合が多く、配当金に対する関心は高くありません。株主は経営者として役員報酬を得ることができますが、それは経営遂行という知的・身体的労働に対する報酬であり、資本提供に対する利益とは異なります。

とは言うものの、多くの場合、節税等の観点から配当よりも役員報酬として収入を獲得する方がより現実的な選択かも知れません。支払われる名目がどのようであれ、株主にとって出資金に対する利回りは非常に重要な観点です。この利回りを規定するものが株主資本利益率、すなわちROEです。企業の存続と成長はEOEによって決まるといっても過言ではありません。企業規模に関わらずROEを如何に高めて行くかが企業経営にとっては重要なのです。ROEとはReturn on equityの頭文字をとったもので、株主資本に対する当期利益の割合を表したものです。ROEは当期利益/株主資本で算出されますが、これを更に分解すると、?@売上高対当期利益率×?A総資本回転率×?B財務レバレッジと表現することができます。?@は売上高に対してより多くの当期利益を上げれば向上します。すなわち、収益性を高めることですから、売上高一定の下で売上原価、販売管理費、営業外費用等の費用を削減し、より付加価値の高い商品、製品等を開発すれば良いことになります。?Aは、総資本に対してより多くの売上高を上げる、又は売上高一定の状態でより少ない資本で経営を行うことができれば向上します。すなわち、遊休資産や売上高獲得、費用削減に関係のない資産を圧縮することが有効になります。問題なのは?Bの財務レバレッジです。

財務レバレッジとは、総資本/株主資本で表されます。これを高めるには株主資本一定の下で、総資本を拡大すれば向上しますから、他人資本をより多く調達していけばROEは高まるように考えられます。確かに、高度経済成長期や安定経済成長期においては物価が毎年上昇し、経済成長率も4〜5%から十数%ありましたので他人資本を有効に活用し当期利益を増加させることができました。しかし、バブル崩壊により経済成長率、物価上昇率は鈍化、マイナスになり他人資本の調達コスト以上の当期利益率を獲得することが困難になったのです。企業業績の良否が外部の経済・経営環境の影響を受けて決定されると考えた場合、現在の状況において、ROEを向上させるためには、自社の収益性によって株主資本と他人資本のバランスをとることが必要になります。しかし、収益性が低下しつづける場合、ROEを高める方法は減少し、最終的には市場から退去することになってしまいます。このようなことから、企業経営の基本としての株主資本の利回りを向上させるには、常に高い収益性を維持し続けるために市場環境に適応し、いち早く対応を行うことが必要であることが理解できるのではないでしょうか。
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